DETOUR AHEAD

If you don't know where you are going, any road will lead you there.

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映画 『プラットフォーム』 by Jia Zhangke

プラットフォームとは、どんな場所だろう。例えば東京。人ごみで溢れかえるところ。ひっきりなしに発着する電車を待つ場所。しかし少し中心部を少し離れれば、深夜には誰もいない。人は行ったり来たりする。どこかへ向かうために、そしてどこかへ帰るために、プラットフォームに立つ。

『プラットフォーム』は79年から89年までの文化大革命後の中国を映す。しかし舞台は改革の中心地ではなく、北の内陸地(山西省)に位置する小さなまち、フェンヤン(汾陽)だ。幼馴染として育ち、地元の小さな劇団に属する4人の若者が、10年の間にいろいろな変化を体験する。音楽、ファッション、自由度の増した娯楽、電気、新しい政策・・・彼らは経済的にも文化的にも激動の時代を生きる。南から吹いてくる風に翻弄されながら。これは変化の周縁にいた人々の物語だ。地方にいて、まさしく遅れてくる「余波」を受けながらひとつの時代を生きた人々の、そして実際はプラットフォームにも鉄道にも馴染みがなく、しかし何かを待ち続けていた人々の物語である。

鉄道もプラットフォームも、未来のものであった時代。彼らはプラットフォームに立ったこともなければ、汽車を見たこともない。映画の最初は、真っ暗なキャラバンの中で聞いたこともない汽車の音を真似るシーンからはじまる。そして長い地方巡業に出た劇団員たちが、荒野で汽車の音を聞きつけて橋の上まで崖を駆け上っていくシーンが半ばにある。鉄道は新しいテクノロジーであり、それは今まで不可能だったような場所に、不可能だったような時間でもって走っていく。たぶん鉄道が自由という希望と結びついていた時代が確かにあっただろう。

4人の若者のうちの1人は故郷に戻り、地方巡業に出た3人のうちのカップルの会話で、故郷には戻りたくないという会話が出てくる。彼らは不慮の妊娠と中絶を体験して、彼女のほうはその後行方をくらましてしまうし彼のほうはロックミュージシャンのようないでたちになっていくのだが、(そして劇団自体も自称「ロックバンド」になっていく」)、自由という言葉が急に目の前に開けてきた時代に青春を過ごすということは、どんなに不安定なことだろうか。この若者4人にかかわらず、スクリーンに映し出される男たちは本当に頼りなくてふらふらしている。地方の雇用状況の惨憺たる経済的影響に加えて、倫理・道徳的にも、今までの暮らしから大幅な変更を余儀なくされつつある家族の肖像は見ていて切ない。予備知識がないからよく分からないシーンがたくさんあったけれど、たぶん男と女の関係さえ、永遠に変わらない部分と経済的要因に奇妙に左右される部分があるということを現実的に描き出していたと思う。ただのラブストーリーとして見てしまうと粗筋は30秒で語れるほどのものだが、それが2時間半という長さで語られていることを考慮しなければならない。

その2時間半の中で、主人公たちの置かれる状況は変化していき、何にも増してポップやロックなどの音楽がその変化に寄り添う。台湾や香港から流れてくる文化、都会と田舎、古いものと新しいもの。そういう濁流のような勢いに飲まれながら彼らはさまようのだが、地方巡業に出ていた主人公は10年のときを経てフェンヤンに帰り、地元に残ることを決めて徴税官の仕事についていた幼馴染の女性と結婚する。この少女の存在は他の3人の10年間に一度も顔を出さないのだが、映し出されていない彼女の10年間を、たばこの吸い方が埋めていた。いたずらな、ぎこちない少年と少女の恋に不器用だった彼女も、そして彼も、子を持ち、彼女が赤ちゃんをあやしながらヤカンの湯を沸かしているところで映画は終わる。ボーっというヤカンの音が、汽笛の音と符号する。彼らはきっと、プラットフォームに立ったのだろう。想像の中にしか存在しないところ、しかし確かに未来と分かち難く結びついているひとつのしるしであった、その場所に。

彼らは果たして戻ってきたのだろうか、それとも出発するところなのだろうか。暗闇の中で汽笛をききながら、そんなことを思った。

















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  1. 2009/11/10(火) 10:15:13|
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